トップページ> 明日への指針 >『 お客様本位の手づくり豆腐 』 東松山市倫理法人会 渡邉一美
明日への指針
『 消費者の声に気づく、お客様本位の手づくり豆腐 』
(有)とうふ工房わたなべ 代表取締役 渡 邉 一 美
会計士を目指していた大学在学中に、母が病で倒れ余命三ヶ月と診断されました。仕事は父だけではとても手がまわりません、長男である私は、父から大学を中退して、家業を継ぐよう説得されました。同時に母から結婚をすすめられ、病院で母の看病をしてくれた看護婦さんとの結納が交わされたのは、母が亡くなる三日前でした。
スーパーの安売り合戦から脱出
スーパーマーケットの卸売りに販路を求め、当初売上げは拡大を続けましたが、次第に安売り合戦に引き込まれてしまいました。
一丁100円の豆腐が二丁100円となり、安売りの目玉商品として、とうとう一丁10円。卸値は、バイヤーのいいなり、8円に決められてしまいました。製造業として完全に魂を抜かれた状態でした。原料は品質が落ち、この状態がずっと続くのかと暗たんとした気持ちになっていました。お客様から味が落ちたとか、本当の値段はいくらかと苦情も出てきます。その上、得意先のスーパー2店が相次いで倒産。1千万の貸し倒れが発生。ここで思い切ってスーパーとの取引から手を引くことにしました。
真の消費者に気付く
それまで、スーパー向けの設備投資が、消費者の声を反映していると思っていました。大量生産、大量消費、省力化、コストダウン。しかし、店に直に買いに来るお客様は、見かけが良くても大量生産の製品は買っていかないことに気がつきました。おいしいのはどれ ? と、にがりを使用した手づくりの豆腐や見た目は劣る油揚げを求めていきます。
娘の作文が郵政大臣賞に
そんな時、中学ニ年生になった娘が、郵便局の簡保作文コンクールで最高の郵政大臣賞に輝いたのです。作文は「豆腐作りは家族の生きがいです」と結ばれていました。
会計士の道を断念した私の気持ちとは裏腹に、娘は、私たちの毎日の「豆腐作り」の姿を見て「家族の生きがい=聖職」と見ていてくれたのです。
国産大豆で豆腐を
ある日、お客様から、国産大豆で豆腐作ってくれませんか、と依頼がありました。安全で美味しい豆腐の依頼でした。遺伝子組み換え大豆の事もそのお客様から学びました。
1回70丁、250円なら出来ます。と答えると、それでいいと一週間後、購買者リストを持って来ました。隣村の農家が米の減反で大豆を栽培する事を話すと、生産者の顔の見える大豆なら更に良いと言う事になりました。
こうして1週間に1回、火曜日に地元の大豆を使って、お客様の豆腐作りが始まりました。それが、100、200、500丁と増え、火曜日以外にも、「火曜日のお豆腐を下さい」とお客様が来るようになりました。そして、とうとう家内の店売りの方が、私の配達より多く売れるようになりました。
「お客さんの為にお金を使う」
経営コンサルタントの先生から「お客さんの為にお金を使いなさい」とアドバイスを受け、POSレジスターを導入、釣銭間違いの心配を解消、35台分の駐車場を整備ました。
「おからドーナツ」などの商品開発も進み土日には2千個も売れるようになりました。
国産というより生産者の分かる地元の大豆、郷土都幾川の水を使い、手間を省かない、お客さま本位の豆腐作り。
来てくれるお客様は、本当に「豆腐が好きな人」、店頭で豆腐の話をすると、目を輝かせて聞いてくれます。そして、親戚にも、お隣にもと両手に一杯買ってくれます。
スーパーとの取引を、来店専門の「お客様の豆腐屋」に転換して本当によかったと思います。美味しくて、安全な豆腐を作る事ができ、お客様が喜んでくれる。地元大豆の生産者も販路価格を心配せず安心して栽培して頂けます。
現在、一日400人、休日には800人以上のお客様が来てくれます
平成16年 埼玉県知事賞受賞(埼玉農林業賞 地産地省の部)
平成17年 農林水産大臣賞受賞(優良食料品店全国コンクール)
平成18年 毎日農業記録賞優秀賞受賞(一般部門の部)
作成日時:2009年2月14日 23:31
