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明日への指針

「 妻 の 一 言 」

                     (株)飯田製作所 代表取締役 飯田正之

 

  農家の長男として暢気に

 

飯田正之 001.jpg 1958年、農家の長男として生まれました。祖母から「勉強して大学にでも行かれると農家を継がなくなってしまう、勉強するな」と言われていました。私も勉強好きではなかったので陽気に暮らしていました。

 しかし農家の嫁不足を心配して嫁さんを貰うまでどこか勤めろ、という事で高校を卒業すると地元の製薬会社に勤めました。何年かして、薬剤師の資格を取って入社した後輩が私より高給で、私の給料では、農業の自分の家がやっていかれない、いずれ食いつぶしてしまうことに気が付きました。この会社では係長止まり…。そこで日頃からお世話になっている方に相談して板金の会社で修行し独立し家を継ぐ決心をしました。5年の予定でしたが7年してようやく独立しました。

 

 昼も夜も働いて

 

 独立した当時は、別の板金会社で8時から5時まで働き、そこから仕事を頂いて家の長屋で6時半から11時まで働きました。12時をすぎる時もあり、妻を上手に褒めては度々手伝ってもらいました。今、思えば子供がお腹にいた時も、また年子で大変な時でもよく手伝ってくれました。改めて感謝です。

 

 バブル崩壊・父の大怪我

 

 平成3年、3千万円借金してようやく工場を建て、ベンダーとコーナーシャ、セットプレスを購入しました。

 その月に得意先の仕事がゼロになってしまいました。バブル崩壊に直面したのです。借金だけが残り、夜も眠れません。とにかく一軒づつ会社訪問して歩きました。

 やっとの事で曲げの仕事を頂きましたが、板切り(シャーリング)からやってくれと頼まれました。2人でないと出来ないため、農業しかやったことのない父親が、見るに見かねて手伝ってくれました。

 その日の3時過ぎ、自動送り機に手袋がひっかかり父親の右中指第一関節から切断する事故が起きてしまいました。「すまない」と謝る私に、病院で「これで突き指しなくてすむわ…」と冗談言って気を使ってくれました。思い出すと涙が出ます。

 それから必死に仕事を探し働きました。1個300円の仕事を頂いた会社からは、年間板金外注先NO1に迄成長することが出来ました。

 

 取引先がまさかの倒産!

 

 ところが、会社を起こして14年目の事、借金をして多額の設備投資をした矢先、年間売上の半分以上占めていた会社が倒産をしてしまいました。

 いずれ連鎖倒産という噂。なんとかしなくてはと必死に駆け回った。倒産した社長を恨みました。やり場の無い怒りや不安を抱え、父の墓に向って「おやじどうすりゃいいんだ…」1千5百万の負債が仕事継続には、4千5百万必要な事も分かってくる。

 

 妻の一言「どうってことないよ」

 

飯田英美子.jpg そんなある日、あっけらかんとした口調で妻が一言いった。「子供が生きるか死ぬかに比べたら、こんなこと、どうってことないよ」…幼い息子が病で死にかけた日の事が蘇った。髪振り乱して必死で看病する妻の姿も、父親の長い看病も、ふたりで乗り切ったじゃないか…

 

 従業員の応援

 

 従業員も給料減らしも、会社無くさないでくれと言ってきました。

 「自分が変わらなくては…」、なけ無しのお金で、妻とふたり半年間、経営コンサルタントに指導を受けました。私がいかに仕事に甘かったか分かりました。また、倫理法人会の経営者モーニングセミナーに毎週通い勉強しました。 そして営業に出かけるときは京セラの稲盛さんのテープを何度も繰り返し聴きました。今でも稲盛式経営11ケ条が基本です。『1、目的を立てる 2、目標を明確に 3、強烈な願望を心に描く 4、誰にも負けない努力をする 5、売上を最大に経費を最小に 6、値決めは経営なり 7、本能…肉体を守る為のもの、生きていく人間に必要なもの 8、謙虚にしておごらず、さらに努力を 9、毎日反省する 10、悩み心配するな』とくに11条、起きてしまった事を心配するより働け、は本当に勇気付けられました。

 

 「ピンチはチャンス」

 

 食卓を囲みながら、子供達にもきちんと事情を告げた。「お父さんは大失敗してお金もらえなくなってしまった。でも逃げないで頑張るからな」日頃から「お父さんは偉いんだよ」と聞かされている子供に話すのは辛かった。

 「ピンチはチャンス」と書いた腕章をつけ仕事先にもそのまま出かけた。従業員みんなの頑張りが嬉しかった。励ましてくれる人、仕事の世話をしてくれる人…、その一つ一つがありがたかった。仕事も徐々に持ち直すことが出来た。人との繋がりこそが財産なんだ。男にとって仕事とは家族を養うものと思って、自分ひとりが頑張って働いてきたつもりだった。だが、私の方が支えられていたのだ。家族に、従業員に、出会った人々に、そして亡き父にも。

 

作成日時:2009年2月14日 22:21

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